夢精という言葉を聞くと、男性は思春期のころの思い出がよみがえってくるかもしれませんね。いうまでもなく、睡眠中、無意識のうちに射精する現象のことで、10代半ばの男性の特権のように思われています。しかし、夢精の経験の有無や頻度、経験する年齢には個人差があり、生涯のうち一度もしないという人もいれば、30代、40代になっても頻繁に夢精する人もいます。成人して以降の夢精も健全な現象であることには変わりないので、特に心配する必要はありません。

そして、近年は女性も夢精をするという、興味深い報告が寄せられています。眠っているあいだ、特に身体や性器に触れたわけでもないのに、激しい快感に襲われ、膣が痙攣し、オーガズムに達するというものです。男性と違い、精液を放つわけではなしので″ドリーミング・オーガスム″といったほうが、ふさわしいでしょう。

男性の場合は、精子が一定量以上溜まると夢精が起きるといわれていますが、女性の場合は何をきっかけにこのドリーミング・オーガズムが起こるのか、何のために起こるのか、そしてどのくらいの頻度で起こるのかなど、詳細はまだ明らかになっていません。

一説によると、性欲が高まったときに夢精をするともいわれていますが、男性のように物理的に溜まるものがあるわけではないので、調査をするにしても簡単にはいきそうにありません。また、夢との関連も今後、研究が待たれます。男性の場合、必ずしもセクシャルな夢が必要というわけではないようで、性的要素がまったくない夢を見て射精にいたる例も少なくないようですが、女性はどうなのかも興味深いところです。

興味深いのは、セックスのときには膣でオーガズムを経験したことがない女性も、ドリーミング・オーガズムでは膣でイク人がいるという報告があることです。オーガズムは経験によって身体に覚え込ませていくもの。一度でも経験すれば、その後は比較的イキやすくなります。夢精を体験した女性は、少なくともイッた経験があるということになります。女性のオーガズムは深くて複雑なものだと、ますます驚かされます。今後の医療や性科学界の現場で、ドリーミング・オーガズムの研究が進むことを期待します。